雪組の同期ーズたちにとっては自分達はあくまでも「銃後」だった日常。
1幕終盤から遠いところにあった「戦場」がその「銃後」の人々の生活を追い詰めるようなギスギスした空気になっていく。
公演の内容も華やかなレビューから軍人や前線へ赴く兵士たちを支える人々の健気さ勤勉さを礼賛する堅苦しいものになっていく。
そんな中「戦火の中にも心の機微」を描写しようとした演出を「不謹慎だ」と客席からとがめられる。とがめる人をなだめ「自分は海軍の軍人だがつなげるものなら女性と手をつなぎたい」と場を収めるよう努める海軍中尉速水。
いや、確かにかっこいいけど劇中劇の軍人の方がずっと謹直ってどういうことなんwwとなるわし。
東京に続き兵庫の劇場も閉鎖が決まり、ジェンヌたちは慰問公演に行くこととなる。
2幕になってから戦禍が日本に近寄ってくる空気と、本土より豊かな部分もあるけれど自分たちの歌を聞きながら敬礼して任地へ去っていく兵士たちの姿にモヤモヤしていく雪組の慰問公演の面々。
火の扱いの条件が厳しくストーブもつけられない、オオカミが兵舎に乱入してくることもあると聞き戦々恐々となる。
死の隣りあわせがなんだ!オオカミが出るならオオカミをふん捕まえてオオカミでスキヤキしたる!と初舞台後のスキヤキの歌をリプライズする面々。
湖月リュータンは「みんなを引っ張っていくのが組長でトップスター」「まとめ役の組長がみっともなく怖がったりするような情けない姿は見せない」という気丈さが「こういう人ならどんな厳しい人でもついていきたい、この人のところで努力したい」と思わせるんだろうなあと。
差し入れを届けてくれた兵士、推しを目にしたオタクのような勢いで奇声を上げる。
おいおい今(劇中)昭和ぞ。令和のオタクみたいな真似すんなや。
母がファンだったとリュータンにつげる兵士のあんちゃん。
兵舎を抜け出して泣いていた兵士のあんちゃんとトモがキスをしていた!と間が悪く目にしたベニ、引率の先生が見つけ大騒ぎになる。
「絶対スターになってやる!」と入団当初から息巻いていたトモの生き急いでいた理由がここで明かされます。
「戦場で死ぬのと病気で死ぬのと形が違うだけで死がそこにある者どうしでふれあっただけ」
というトモ。
トモは感情を胸にしまい込んで見せないタイプの「強い女」。
大陸での慰問公演を終え、海軍に護衛されつつ本土へ戻ることになる。
大劇場での騒ぎを救ってくれた速水中尉と再会するタッチー。「逃げたくて入った」はずの宝塚だったはずなのにこの場所を失いたくない!と詰め寄ったタッチーの舞台を愛する気持ちがあることを見透かされ、自分もまた舞台を愛していること、親族の仕事の関係でいった米国と交戦することになってしまったことがいたたまれないと感じていることを打ち明けられ、短い対話の中で自分もへ思いを寄せていることに気が付くタッチー。
米国のレビューの話をしながら踊るタッチーと中尉が優美でかっこいいのだ。
この踊りながら思いに気が付くタッチーが守りたくなる可愛さなのだ。
日本に戻ってから、戦況はさらに悪くなり食糧事情も悪くなっていく。
慰問先で兵士からぶつけられた暴言でやさぐれていた影山のもとへ「実家からうどんを分けてもらった」とうどんを手に影山の家をたずねるリュータン。
そこで影山の手記を見てしまい。影山がタッチーに引かれているという個所を見つけて飛び出してしまう。
見守ってきた後輩でもあるし同じ組の仲間でもあるタッチーとの間で葛藤するリュータンの「トップスター」ではなく一人の女性としての気持ちがあふれ出てそれに振り回されるのが舞台版での彼女の「人間臭さ」の発露となる。
そんな中でもみっともない嫉妬はしまい込み「雪組の組長」として寝込んで過去の公演のレコードを聴くばかりになってしまったトモのところにかけつけるリュータン。
初舞台の時に衣装の手袋を無くした悪夢にうなされるトモに「あったで!」と彼女を悪夢から幸福な夢に導き「相手役のトモと一緒に主演にしか見えない風景」と喝采を共演者の同期ーズと一緒に演じる「トップスター・嶺乃白雪」。
その幸せな幻の中でトモは息を引き取っていく。
トモの死から慰問公演に行けることもなくなり、ジェンヌたちはスターも下級生も隔てなく勤労奉仕に駆り出される。
演出家の仕事もなくなった形となった影山も名古屋へ立ち、最後の出征前の休暇中の速水がタッチーへ別れを告げに来る。
「あなたが生きる幸福な未来を守るために自分は行く」と。
ついにバラバラになる「宝塚歌劇団」。
奉仕先で監督に見つからぬよう「家族に会いたい」「怯えずに眠りたい」「まともなものを食べたい」と歌うジェンヌたち。
定例のラジオ報告で回天に乗って戦死した海兵の名前として速水の名を読み上げられ、ついに心の支えを失ってしまうタッチー。
直後に爆撃が雪組の面々が働く工場を襲い、みんな防空壕へ待避するがタッチーは抜け殻のように街をさまよう。
死んだらあの人のところに行ける、と思っていたのかもしれないと思わせる貴城タッチーの痛々しさと切なさで涙が出てきた。
「あんたなんか死んだらええ!」と影山の手記のこと、自分にないものを持っていること、今までの思いと嫉妬とでグチャグチャになりつつも炸裂する爆弾からタッチーを守るリュータン!
思いを寄せる影山の想い人であっても「こいつがいなくなったら先生は自分のものになる」などというゲスなことを思って見殺しにするよりも「仲間を守れないで何が組長か」と身体が動くリュータン。
宙組のいじめっ子上級生の皆さん96期のいじめ主導してた皆さん、リュータンの爪の垢煎じて飲んでください。天下の宝塚まで行っといてそんなに自分に自信がないんかい。気に食わない生徒いじめてる暇あったら練習せえよ。20歳過ぎて違法薬物売ってるような地域の中学生のようなことをやってて恥ずかしくないんか。
命はとりとめるものの女優として命と言える顔に傷を負ってしまうリュータン。
そして何とか生き残るものの、米軍機の落していった「乙女の宝庫たる宝塚は破壊しない」というメッセージを読んで憤りをぶつける治虫少年。
そして雪組の面々も我が家でもあるすみれ寮に戻ってくるが、そこで負傷したリュータンに愕然となる。
最後まで心配する下級生の前で「問題ない」と笑顔で、そして負傷の原因となったタッチーも責めず、心配だと実家から戻ってきたベニも振り切り「アンタには運がある!アタシの後はアンタ」「やめるなんて言うたら許さへんで!」とタッチーに雪組の未来を託し「大阪の実家の家族を探しに行く」とすみれ寮を後にする。
そして何とか生き残るものの、米軍機の落していった「乙女の宝庫たる宝塚は破壊しない」というメッセージを読んで憤りをぶつける治虫少年。
「嶺乃白雪が負傷した言うて名古屋から飛んできた」影山に傷を負った自分を見せたくなくて突き放そうとするリュータン。
「オレはリュータンが好きなんや!」と告白を受けるリュータン。「どんな時も離れない、どん底だって生きていける二人なら」と歌う二人。
心配だと探しに来た同期ーズ含む下級生たち。ボロボロになったリュータンの防空頭巾を見つけて死んだのではと感じたところに「勝手に殺すな!」と影山と登場するリュータン。
「サインください!」という治虫少年に「もう嶺乃白雪やないんやった」と本名をサインし、下級生たちに「結婚すんねん!」と宣言。
「もう戦争は終わった、タカラジェンヌだからできることがあるやろ?」と河川敷の階段を舞台装置に見立ててレビューの再現をする雪組の面々の姿で新しい時代への希望を思わせて終幕。
「出演者たちが平成の世でレビューをしたら」という体で男女混合のモダンな衣装でのダンスのアンコールで、コマ劇場の由来になった「回って上がってくるセリ」が登場してくれるという。
雪組の面々だけでなく先生や野郎組まで華やか~に着飾って踊っているので何だか笑ってしまいましてですな。
TV版の元になったドラマも見直してみたい。
てなわけで長くなりすぎた湖月リュータン編の感想これにて終幕!